両国シアターXカイで公演中の「遙かな町へ」、11月23日ー11月27日。
この舞台は、文化庁委託事業「令和4年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」日本の演劇人を育てるプロジェクトによるものだそうで、新進演劇人育成公演(俳優部門)というわけです。
原作は谷口ジロー氏の漫画「遙かな町へ」で、フランス語圏で人気ということで、再輸入されてスイスの劇団STT(Super Trop Top)を率いるドリアン・ロセル氏とデルフィヌ・ランザ氏が演出を担当するという、少し異色の舞台と言えるでしょう。ちなみに谷口ジロー氏は既に2017年2月にご逝去されていますが、「孤独のグルメ」の漫画も代表作。また2010年にイタリアで開催された「ルッカ・コミック&ゲームス2010」にて最高栄誉賞Maestro Del fumetto、2011年にはフランスの芸術文化勲章シュバリエも受章されているという。
さて、今回の舞台では、キャストが15名、「基本的に複数の役を男女を問わず演じている。キャストは原則して全員がコロスの役割を担う」との一枚紙の説明。
五十嵐遥佳さん、稲葉歓喜さん、猪俣三四郎さん、海宝弘之さん、小泉駿也さん、近童弐吉さん、阪本竜太さん、谷村実紀さん、中野亮輔さん、花島令さん、藤井千咲子さん、星怜輝さん、松崎将司さん、八鍬幸司さん、𠮷越千帆さん。
内容は、過去回帰ものでもあり、トランスパーソナル的感覚が冴えますね。鳥取弁(倉吉弁)、懐かしいものがありますね。
繊細な動きと細かい動線、その動線によるシーン転換、音響・効果音の躍動感、全員がコロスというシナジー、肉体のみならず舞台も楽器として共鳴音としても活用するという肉体芸術との融合、シンプルでありながら観る側のイメージを豐かにする舞台装置、と非常に興味深いです。バレエのようにも。
ひるがえって、現在の閉塞的な世界の中で、どう自分らしく生きるかという問いに対する答え一例を、この舞台は提供しているようでもありますね。
その意味では、このタイミングで、新進気鋭の若手の俳優の皆さんが本舞台を演じているのは、ある種の吉祥にも感じますね。👏