鳥飼的通訳道:黒子でコミュニケーションのプロ
鳥飼さんはアポロ11号の月面着陸時のテレビ同時通訳を23歳の時に担当したそうで、
その後、通訳という仕事の矛盾とやらを悩んで30代半ばで同時通訳をやめて、再び、通訳研究ということで再び通訳世界に戻ってきた、そうです。
さて、こんなような内容があります。
「通訳の基本は準備とメモの能力。自分のペンで用語集を作らないと単語は頭に入らないんですね。わからない用語を調べて自分でノートに書いて、ようやく現場で単語が出るようになる。専門家に質問できるようになることを勉強の目安にしました。通訳の本番でまず必要なのは「メモの能力」です。これは各自で工夫するしかありません。」
「通訳はどのように伝えるか現場での瞬時の判断で成り立ちますから、完璧な通訳はない。」
「通訳は自分の言葉を持たない透明な存在ではない。黒衣だけどコミュニケーションの専門家なのだ。」
なお、最後の文にいたるまでは鳥飼さんなりの葛藤があったそうです、
つまり、「通訳は相手になりきる仕事ですから、空疎な人物の通訳が重なれば空疎な発言を口にしなければならない。通訳という舞台裏では、その人の人間性もすごくよく見えます。まったく共感できない人の言葉もそのまま訳さなくてならないのが苦痛でしょうがないこともありました。」ということで。
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これ以外にも通訳は、エネルギー的に場を整えるという役割をし、また間合いを読むという術も必要となるんでしょう。
エネルギー的に豊かな通訳は、いるだけで会談者の間に微細なラポートをその場で構築することが可能となります。言葉以前、しかし言葉以上に効果があるといえましょうか。